2人が周囲を見回すと、ひらりと何かが飛んできた。
「え、何々?」
「……………………。」
深愛と涼子の前に現れたのは、小さい蛾の怪獣に乗った小人サイズの少女2人であった。
「うわ、小さい!…………って深愛?どうしたの?」
「ひょっとして………インファント島から来たの?」
「………はい、そうです。」
「私達は貴女を探していました。海堂深愛さん。」
「…………え、探してたって………もしかして深愛がさっき言っていた先住民?」
「そうです。私はアミ。こちらは妹のティエです。」
ペコリと会釈する2人に涼子もつられて会釈した。
「……………何をしに来たの?」
「1度、インファント島に来ていただきたいのです。」
「待った待った。話が見えない。順番を追って説明してちょうだい。」
「………うん、涼子の言う通りだ。いきなりこういう場所でそんなことを言われても、困る。
それに私達が降りないと、不審に思われる。ここは場所を変えよう。」
「わかりました。」
「ええっと、そうしたら何処に行くの?ここからなら、私ん家が近いけど。」
「………いいの?」
「いいのいいの、気にしないで。」
薬師寺家。
夜遅くにも関わらず急にやってきた深愛を瑞枝と健三は暖かく受け入れてくれた。
「夜分遅くに失礼して本当に申し訳ありません。」
「いいのよ、気にしないで。お友達を連れてきてくれて嬉しいわ。」
「何もないけど、ゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、私の部屋に行こうか。」
涼子の一声で深愛は彼女の部屋に向かった。
「……………で、本題に入っちゃうけど…………インファント島で何があったの?」
「16年前、日本から海堂詩織さん率いる防衛軍の特別研究チームが来た際、私達先住民は
最先端の医療物資と引き換えにモスラの遺伝子を提供しました。」
「まさか、ゴジラを倒すためだけに人間の受精卵に怪獣の遺伝子を組み込むためだったとは思ってもいなくて……。」
「………よく、遺伝子提供したよね?」
「言語が通じていなかったって言うのもあるけど、
先住民の方も最先端の医療物資を使わざるを得ない状況になっていたんだね?」
「はい。日本では廃れた流行り病が先住民の間で流行り、最先端の医療物資を使わなければ
全員が死んでいた……とそう聞いています。」
「………で、何で今になってモスラは深愛のところに貴女達を遣わせたの?」
「………実はモスラの寿命が尽きかけているのです。」
「ええ!?」
「……そっか。代替わり………。」
「そうです。モスラの代替わりが行われようとしているのですが、死ぬ前に
貴女に会いたいと。」
「会って、どうしたいの?話でもしたいの?」
「はい、そうです。」
「………………そっか。普通に考えてみればそうだよね、自分の遺伝子が人間に使われたんだもの。
そりゃ、話したくもなるって。
深愛、私は行くべきだと思う。防衛海軍に話をしてさ。」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、私、日本を守るための要なんだ。
そう簡単に離れるわけには………。」
「1日ぐらいなら問題ないって。ゴジラが上陸したらわかるようになっているんでしょう?」
「…………そりゃまあ、ね。」
「別に深愛の存在を否定しているわけじゃないんだからさ。ここはほら、里帰りって言うのも変だけど
会った方が絶対良いって。
お父さんの説得は私もするから。
というか、私もインファント島に行く!それなら問題ないでしょう?」
「………え、えぇ?でも、急にそんなこと言われたらお父さんとお母さんの許可いるんじゃ……。」
「ちょっと相談してみる!」
言うが早いか、涼子は部屋を飛び出すと両親の元に向かった。
続く。