深愛と涼子を乗せたイージス艦『しののめ』は、1日かけて日本から
インファント島に到着した。
「ここから先は大型艦はいけません。」
「まぁ、そりゃそうだろうね………。」
「………何かいかにも原始的って感じだもんね………。」
海岸沿いに着艦した『しののめ』から、降りた深愛と涼子を
アミとティエは案内した。
「ところでこの子、可愛いね。名前なんていうの?」
「フェアリーです。モスラの御使いなんですよ。」
「………フェアリーってまた安直な名前だねぇ………。」
「深愛、そんなこと言ったらダメでしょ。可愛い名前なのに。」
「海堂一佐、薬師寺さん。お気をつけて。」
「ありがとうございます、藍堂さん。」
「んじゃ、留守は任せた。」
「はっ。」
アミとティエの案内で、深愛と涼子はインファント島内部に入って行った。
「…………うわぁ…………植物だらけだ………。」
「あ、涼子。足元の植物、吸血種だから気を付けて。」
「マジで、うわ踏むところだった。」
「後、頭上も注意して。」
「はーい。」
吸血植物をかわしながら、2人はモスラがいる神殿に向かった。
「……………。」
「………………。」
「………人がいるね。」
「うん、しかも先住民だよ………。」
深愛の姿を見るなり、先住民達は舞を披露し始めた。
「深愛さん、涼子さん。奥へ。」
「うん。」
「お、お邪魔します………。」
はらり、はらり、と。鱗粉が舞う中、2人は神殿の前まで歩くと足を止めた。
「……………。」
「……………。」
翼をゆっくりと上下に振る、モスラが巨大な卵の上に鎮座していた。
「…………モスラ。」
深愛がそう呟くと、モスラは鳴いた。
「死ぬ前に会うことができた、とモスラは言っています。」
「そんな悲劇的なこと言わないで………って言っても、無理はないのね。
ホントに寿命が残りわずかなの?」
「はい。タマゴを産んで、後は死を待つだけです。」
「…………………モスラはこの1匹だけ?」
「はい。大昔はたくさんいたのですが、時代の流れと共に数を減らしていきました。」
「………そっか。」
「どうして今になって深愛に会いたいって思ったの?」
「子供が生まれる瞬間を見届けて欲しいと願ったからです。」
「見届ける時間すらないの?」
「…………はい。」
「…………………。」
先住民の祭司長がアミとティエに何かを話した。
「ね、何て言ったの?」
「人の身で神の領域に到達しようとしていることは確かに許されざること。
でも私達は自分の命を惜しんだために神の遺伝子を提供してしまった。
断罪されるべきは私達の方だと。」
「そんな…………。」
「………でもこうして貴女と相まみえることができて本当に良かったと思う、と。
こうしてみると、本当に普通の人間と変わりない、と。」
「………まあ、ハエ男みたいな感じにならなくてよかったって思うけど。」
「…………そうだね。あ、こっちの話、こっちの話!」
「涼子さん、モスラが深愛さんのことをよろしく頼むと言っています。」
「……へ?何で?」
「怪獣を恐れず、人間を恐れる貴女はとても貴重な存在だと。」
「………そりゃ、怪獣よりも人間の方が恐ろしいもん。
憎しみや怒りで、人の受精卵に怪獣の遺伝子を組み込もうとしたんだもの。」
「…………涼子。」
「まあ、やってしまったものは仕方がないかもしれないけどさ。
………結局、どう扱うかは私達人間次第だもんね。」
「…………うん。」
その時、先住民達がざわざわとざわつき始めた。
「………え、何?」
「何があったの?」
続く。