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ACT1-(3)

入学式を終え、ヒビキとヒカルはマンションに帰ってきた。
それと同時にヒビキのPDIに通信が入る。
「俺だ、どうした?」
『怪獣らしき反応が出たので、GUTSに出動要請が入りました。』

「…………わかった、すぐに行く。」


PDIで通信をするヒビキをよそにヒカルはてきぱきと彼の制服を準備した。
「………すまんな、ヒカル。今日は非番なのにゆっくりできん。」
「いいよ、父さん。入学式の途中で抜け出されるよりはマシだから。
夕飯、腕によりをかけて作っておくね。」

「ああ、期待してる。」

GUTSの制服に身を包んだヒビキはそう言うと、玄関を後にした。


「……………………………そっかぁ。もう12年も経つのかぁ。」

棚に飾ってある写真立てを見たヒカルは悲しそうな顔をした。

12年前、怪獣災害によってヒカルは実の両親を、ヒビキは妻を失った。
ヒカルは両親によって庇われたため、軽い怪我を負った程度で済んだが、
失ったものはかえってこない。

「…………………………おじいちゃんもおばあちゃんも早くに死んじゃったしねぇ。
曾おじいちゃんと曾おばあちゃんについても、私が生まれる前に亡くなったって言うし。」

ヒカルは写真立てから視線を逸らすと、掌に光を集めた。

今は亡き曽祖父は超古代文明の遺伝子を受け継いでいた。
それもあってか、ヒカルは曽祖父譲りの遺伝子を強く受け継ぎ、
この力を人のために役立ちたいと思い、TPCに入ることを志願していた。

だが、ヒビキは人造ウルトラマン計画があったことを理由にTPCに入ることを断固として反対した。
表面上は凍結したが、裏ではまだ進行している可能性を否定することができないため
長期的な安全を確保することができなければTPCに入らせることはできないとヒビキは言っていた。
強い力を求めるのは人類の悪いところだ、というところも。

怪獣災害で生き残ったからと言って自己犠牲をする必要はない、とヒビキはヒカルにそう言った。


「………父さんも心配症だなぁ。でも私までいなくなったら、確かに怖いかも。」

続く。

ACT1-(2)

メトロポリスにある私立高等学校に、ヒカルとヒビキの姿があった。
「……………ねぇ、あれってGUTSのイルマ隊長じゃない?」
「ホントだ、娘さんいたんだ。」
「てっきり娘さん、TPCの隊員養成学校行くかと思っていたけど…………。」
「さすがに自分の娘を隊員にしたくはないんじゃない?
だってほらさ、奥さん、12年前の事件で亡くしているし………………。」
「ちょっと、こういう日にそう言う話は止めなってば。
本人に聞こえたらどうするの?」

正門玄関でクラスの発表がされ、ヒカルは1年A組であった。
「………A組か。」
「まぁ、何処でもいいんじゃないかなー?あんまこだわらないし。」
「じゃあ、俺は保護者受付のところに行ってくるから。」
「うん。じゃあ、また後で。」

ヒカルとヒビキはいったん別れ、ヒカルは教室に向かうことにした。
教師が教室に入り、入学式について説明した後、ヒカル達は体育館に向かった。

入学式は何事もなく進行し、無事に終了した。

教室に戻った途端に新入生達は互いに自己紹介をし、グループを作る生徒達もいた。

「…ええっと、マドカ・ヒカルさん?」

「うん、そうだけど。」
「マドカ・ダイゴさんの曾孫なのよね?火星で花を栽培してた。」
「あ、うん。」
「凄いよね、マドカさんもそういう方面の進路って考えているの?」
「うーん、まだ考えてはいないかも。
曾おじいちゃんの研究もやってはみたいけど、自分のやりたいことってまだ決まっていないから。
高校生活で進路が決まればいいんだけど。」
「そっか。」

「でもさ、てっきりTPCの隊員養成学校行くかと思っていたけど。」
「父さんが反対しているんだよ。俺の跡なんて継がなくていいとか言っちゃってさ。
自分の娘が部下になるのは嫌なんだって。」
「あー、わかるわぁ。戦場に出て欲しくないもんね。」
「そうそう。無難な人生を送ってほしいって。」

「なるほどねー。」

和気藹々と話をしてくる同級生にヒカルはクスクスと笑った。


続く。

ACT1-(1)

街道襲撃事件から12年の時が経過した現在。

メトロポリスにあるマンションでマドカ・ヒカルは朝食を作っていた。

「父さん、朝食ができたよ。」
「………………ああ、今行く。」

ぼりぼりと頭を掻きながら、イルマ・ヒビキは欠伸をした。

「……………しっかし、ヒカルももう16歳か………今日から高校生か。早いな。」
「それだけ父さんも歳を取ったってことでしょ。」
「だが、まだまだ現役のつもりだ。」
「そうだね、GUTSの隊長だもん。しっかりしてもらわなくちゃ。」
「………ヒカル。わかっていると思うが、人前で光を使うなよ。」
「………うん、わかっているよ。」

棚の上に飾られている写真立てを手にとり、ヒカルはそれを見た。
まだ幼い自分と産みの親の写真。

12年前の怪獣による火災により、ヒカルは両親を失った。
ヒカルの両親と知り合いであったヒビキが引き取りを申し出て、養子縁組を成立させた。
色々と事情がある故のことではあるが、ヒビキとヒカルの仲は良好であった。
「父さんには感謝してます。ここまで育ててくれたことには。」
「何、君の曽祖父と曾祖母が旧GUTSのメンバーだったからな。
事情を知る者の務めだよ。」
「………………うん。」

ヒカルの曽祖父であるマドカ・ダイゴがウルトラマンティガであったことは、
旧GUTSのメンバーしか知らない。
そして、そのGUTSのメンバーの子孫もそのことを知っていた。
これが世間に知られれば、世界はどんな反応をするか。
TPCには外部協力者ということで、ヒカルの名前を登録しているがそれだけだ。

「………まぁ、何にせよ、この12年間何事もなかったんだ。
今後も何事もないといいんだが……………。」
「やだなぁ、父さん。絶対何かあるって。16歳にもなったんだし。」

「…………それが心配なんだがなぁ…………。」
「大丈夫。いざという時のために、色々習っているんだから。
あんまり心配し過ぎると、胃に穴が空いちゃうよ。」
「…………そうだな。」

「…………あ、行けない。もう入学式の時間だ。父さん、急ごう!」
「あ、ああ。」




続く。

プロローグ

………それは突然の出来事だった。
突如として、怪獣が街を襲撃した。避難勧告が出される中、
怪獣の炎が渋滞と化した街道を襲った。
灼熱の炎に燃やされる中、強い光が突如として炎を祓った。

その強い光を放っていたのは、まだ4歳の子供であった。
1組の夫婦によって即死を免れた子供は状況を理解できず、泣き喚いていた。
その光は止まることを知らず、より一層強い輝きを放った。
そして、それは人の形となり、街道に現れた怪獣を一瞬にして倒してしまった。

「………隊長、光が…………!」
「………ああ、わかっている。まだ命のある人間がいるかもしれない、すぐに救助活動をするぞ!」

「りょ、了解!」

ガッツウィング1号に乗っていたイルマ隊長は、隊員に指示を出した。


「………………くそ、何で連休最終日にこんな大惨事が起きるんだ…………!?」

かくして連休最終日に出現した怪獣の襲撃によって発生した火災により、
多くの命が犠牲となった。

だがその中でたった1人だけ、生き残った者がいた。
真相については触れられなかったものの、
世間的には夫婦の愛によって奇跡的に救われた子として注目の的となった。




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