シュペーアさんとペルのお話です。
ピンオフでナハトさんにあの二人を描いていただいたのと、
ふとこういうネタいいなぁと思ったのが合わさりました←おい
*attention*
シュペーアさんとペルのお話です
ほのぼのなお話?です
前半はペルとフォル
ペルはやることがかなり極端だったりします…
暫くペルの姿を見なくて心配するシュペーアさんを書きたかった(^q^)←おい
そしてああいう結末にしたかったのでした…!
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、森の奥の廃墟。
その一室で本を読んでいた堕天使のところにやってきたのは長い黒髪の少年……ペル。
彼は堕天使……フォルの前に足を止めると、軽く彼の上着を引っ張った。
そんな彼の行動に読書をやめて、フォルは彼に向かって首をかしげる。
「どうしたの?ペル」
君から僕のところに来るのは珍しいね、とフォルはいった。
彼のいう通り、ペルは滅多にフォルのところにいかない。
というよりは、誰かと一緒にいること自体が珍しい。
そんな彼が来るとは……一体どうしたのだろう?
そう思いながらフォルが訊ねると、ペルは真っ直ぐにフォルの方を見つめて、
少しだけ躊躇うような間を空けた後、いった。
「お手伝い……ある?」
「へ?」
唐突になにを言い出したのかと、フォルはきょとんとする。
お手伝い?
「ん、どういうの?掃除とか、そういうの?」
いつも何だかんだみんながしてくれてるじゃない?とフォルはいう。
彼は最近恋人のところにいることが多く、此処に帰ってきていることが少ない。
今日はその恋人が遅くまで仕事ということで、こうして此処にいるのだ。
だからこそ詳しいことは把握していないけれど……
広いこの屋敷は、割りと綺麗に片付いている。
恐らく、皆で片付けているのだろうと思っていた。
そういったことはペルもしているだろうし、今さら手伝いと言われても……
そんな顔をするフォルを見つめた後、ペルはいった。
「お手伝い……お外の、でも」
何でも、する。
そういうペルを見て幾度かまばたきをしたフォルは、
彼が言わんとしていることを理解した。
「ペル、もしかしてさぁ……バイトのこと、いってる?」
ノアとか僕が時々してるようなこと、とフォルがいうとペルはこっくりと頷いた。
どうやら、バイトという言葉が出てこなかったらしい。
元々隠れた組織のフォルや彼の部下ノアールは表だって働けない。
一応一通りの財はあるものの(もっともその辺りはかつて略奪したものだが)、
ずっとそれだけで生活していく訳にはいかないからと、
フォルやノアールは時々、要人警護のような仕事をこなしている。
恐らくペルはそういったちょっとした仕事のことをいっているのだろう。
そう気がついたフォルは、いっそう不思議そうな顔をした。
「何でいきなりそんなことを?」
お小遣いは一応あげてるよね、とフォルはいう。
ペル含め、まだ幼い操り人形たちはそういった仕事を探すにも苦労するだろうし、
別段金に困っているというわけでもないからと、
適宜好きなものを買えるように小遣いは渡している。
なのにどうしてペルはバイトをしたい等と言い出したのだろうか。
そうフォルが問いかけると、ペルは少し黙り混んだ。
もとからあまり自分の思いを言葉にすることが得意でない彼。
少し悩むような間を空けた後、彼はいった。
「欲しいもの、ある。自分使うんじゃなくて、……」
「プレゼントする、ってことかな?」
フォルが問いかけるとペルはこっくりと頷いた。
そして付け足すようにいう。
「お仕事に、使ってほしい……から、僕も、働いて、買いたい……」
彼がいうには、プレゼントしたいものは顎とに使うもので、
だからこそ自分もそれを買うためのお金は自分で稼ぎたい、といっているようだった。
彼の言葉にフォルは少し考える顔をする。
そして小さく息を吐き出すとふっと笑って頷いた。
「わかった。簡単な仕事で、君ができそうなのを探すね」
「わかった、ありがと、御主人(マスター)」
そういうペルは心なしか嬉しそうだ。
その表情を見てサファイアの瞳を細めつつ、
フォルは一度ペルの頭を撫でてやったのだった。
***
それから少し、時は過ぎて……
場所は変わって、ディアロ城。
その食堂で、銀髪の少年は仲間たちと一緒に食事をとっていた。
「ふぅ……」
彼……シュペーアは小さく溜め息を吐き出す。
そんな彼を見た彼の上官、ヒトラーは心配そうな顔をした。
「シュペーア?どうかしたのか?」
元気がないな、と問いかける彼。
シュペーアはその問いかけにはっとした後、苦笑気味に首を振った。
「いえ……」
そういうものの、彼の表情は晴れない。
何処か落ち着かないように、彼は中庭の方を見ていた。
彼の頭のなかにあるのは、長い黒髪の少年のこと。
最近彼……ペルは此処に訪ねてこない。
体調でも崩したのではないかと、心配していた。
ちゃんとご飯を……食べてはいないだろうな。
彼は飴玉をいつも食べていたから……
そう思いながらシュペーアは溜め息を吐き出す。
一体どうしたのだろう。
今までならほぼ毎日のように城に遊びに来ていたのに……
今週は一度も姿を見せていないではないか。
彼は彼の用事があるだろうし、別に来ないからといってどうということもないが……
やはり、気になる。
シュペーアはそう思っていたのだった。
***
そんな落ち着かない夕食を終えて、シュペーアが部屋に戻ろうとしていた時……
ふと、最近慣れてきた彼……ペルの魔力を感じた。
「え……」
シュペーアは少し驚いたような戸惑ったような声をあげた。
彼がこの時間に此処にいることは少ない。
いつも日が暮れる頃には彼らの住処に帰ってしまうから……
しかし感じる魔力は確かにペルのそれだ。
不思議に思いながら、
シュペーアは彼の魔力を感じる方へ歩いていった。
たどり着いたのは医療棟。
どうやらジェイドの部屋にいるらしい。
それならば、とシュペーアは引き返そうとした。
ジェイドに用事があって来ているのなら、邪魔することはないだろう、と。
そう思って離れようとした時、ちょうどドアが開いた。
そこから出てきたのは、やはりペルで……
その姿を見て、シュペーアは大きく目を見開いた。
「ペルさん!?何で怪我してるの!?」
そう。
ジェイドの部屋から出てきたペルの頬には大きな絆創膏。
額にも絆創膏が貼り付けられている。
相変わらずマフラーを巻いているし腕も引っ込めているからわからないが、
この調子では恐らくその辺りも怪我を……
焦った調子でそういう彼。
ペルは落ち着いた様子で返答した。
「大丈夫。今、お医者様に、手当てしてもらった」
「そういう問題じゃあ……何でこんな怪我を?」
心配そうに訊ねるシュペーア。
ペルは少し悩んでから小さく息を吐き出した。
そして弱い声でいう。
「お仕事、してた」
「仕事?」
彼の言葉に訝しげな顔をするシュペーア。
ペルはこくりと頷いて、いった。
「魔獣を倒す、お仕事……御主人に、もらったの」
ペルはそういう。
魔獣を倒す仕事をしていたのだ、と。
その途中で怪我をしたらしい。
シュペーアは彼の言葉に顔をしかめる。
そして、呟くようにいった。
「どうして、そんな仕事を……?」
首をかしげる、シュペーア。
ペルがどうしてそんなことをしたのかが理解出来ない。
謎は深まるばかりだった。
ペルは彼の言葉に暫し黙る。
そして、ポケットからなにかを取り出した。
「これ……プレゼント、したくて」
そういって彼が差し出しているのは小さな包み。
シュペーアは幾度かまばたきをした後、それを受け取った。
開けていい?と首をかしげると、ペルがこくりとうなずいた。
ペルがくれた包みを開ければ……
そのなかには、美しい装飾のついた、製図用のペンが入っていた。
「これ……!」
「お仕事、使える……?」
シュペーアに向かってペルは首をかしげる。
彼の言葉にシュペーアは頷いた。
そして彼を見つめながら、問いかける。
「これ、買うために……?」
「うん……僕、シュペーアにいつものお礼、したくて……
せっかくなら、僕が自分で稼いだお金で、買いたくて……」
出来ることがないか探した。
その結果が魔獣退治だったという。
シュペーアは彼のプレゼントのペンをぎゅっと握りしめた。
そして、彼をぎゅうっと彼を抱き締めた。
「!!シュペーア……」
「……ありがとう。でも、こんな怪我はしないでほしかったな」
心配になるから、といいながらシュペーアはペルの頬を撫でる。
ペルは小さく頷きながら、いった。
「気に入って、くれた……?」
「勿論」
シュペーアが頷くと、ペルは嬉しそうに表情を緩めた。
よかった、と微笑む彼。
そんな彼を優しく撫でて、シュペーアは微笑む。
「ありがとう、ペルさん」
そういったシュペーアの手には、ペルからのプレゼントのペンが光っていた。
―― ぷれぜんと ――
(大切な彼への、ぷれぜんと
せっかく用意するなら、僕の手で)
(そう思ってくれたのは嬉しくて、久しぶりに見た姿に安心した。
でもそれと同時…やっぱりちょっと、心配になったから)